酸蝕症について
こんにちは、歯科衛生士の平田です。4月も中旬に入り、新生活にも慣れてきた頃でしょうか?
今回は酸蝕症(さんしょくしょう)のお話です。
酸蝕症とは、歯に胃酸や酸性の飲食物が繰り返し触れることで起きる病気です。
あまり知られていませんが軽度のものを入れると、全世代を通して4人に1人の方が罹患しているといわれています。
歯はもともと酸がとても苦手で、酸に触れると化学反応を起こして歯が溶けてしまうからです。むし歯もむし歯菌が出す酸によって歯が溶けて穴があいてしまう病気ですが、酸蝕症との大きな違いは被害の範囲です。
むし歯は限局的なのに対し、酸蝕症は酸が触れた歯面全てで起きるので広範囲に及びます。
酸蝕症は現代の食生活や、生活習慣との関わりが深い病気です。この機会に酸蝕症になりやすい要因を知っていただき、大切な歯を守っていきましょう。
(2018年nico 2月号参照)
現在酸蝕症の原因として注目されているのが、「胃酸の口への逆流」です。現代人の10人に1人に逆流性食道炎の疑いがあり、罹患率は増加中なのだそうです。胃酸の逆流を誘発する代表的な因子は、炭酸飲料やすっぱいものの食べ過ぎ飲みすぎです。このほか、摂食障害による持続性の嘔吐と酸蝕症の深いかかわりも報告されています。
ではなぜ現代、酸蝕症の患者さんが増えているのでしょうか?
それは私たちの歯を取り巻く環境がここ十数年で様変わりしたからです。
季節ものだった柑橘類が一年中手に入るようになり、食卓では主菜にレモンやポン酢をかけ、デザートにオレンジやグレープフルーツが並びます。お酒も果汁たっぷりのチュ―ハイ、ワインが人気です。またおやつでは、炭酸飲料や柑橘ジュースがどこでも手に入るのに加えて、グミや梅菓子も私たちの歯が強い酸と出会う機会となっています。
もう一つ注目すべきは、健康志向。柑橘系果物を毎日欠かさず食べ、飲酢するかたが増えました。意識の高い人ほど熱心に続けるため、酸蝕症のリスクが増大します。酸の摂取は唾液が守ってくれる程度に抑えて、からだだけではなく歯の健康にも気を配っていきましょう。
子どもの酸食歯にも注意が必要です。
例えば…
毎日栄養ドリンクを飲んでいた
熱中症予防にスポーツ飲料を飲んでいた
干し梅にハマって毎日食べていたetc…
硬いエナメル質が溶けて薄くなったところにむし歯ができると進行が加速し、酸で軟化した歯は摩耗・咬耗しやすく、トラブルが複合的に拡大しやすくなります。
すっぱいものを積極的にとる健康法は、習慣的に続けてこそ良い結果が出ます。酸蝕症は歯に酸が繰り返し過剰にふれることで起こります。酸性のものを摂取した後はお水を一口飲むなど、歯をいたわる対策を立ててみてはいかがでしょうか。